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    かけはし2021年1月25日号

性平等な世界


コラム「架橋」

 

 昨年の『かけはし』11月16日号の「韓国は、いま」に、キム・テヨン社会変革労働者党代表の小論(「被害者中心主義」を必要としない性平等な世界のために)が掲載された。その中で「進歩運動陣営内でも被害者中心主義と2次加害に関する論議が提起されている」として、民主労総女性局長の発言を紹介している。
 「民主労総は…絶えず性暴力の被害者と加害者が発生する。しかし幸いなことは、被害者中心主義と2次加害禁止が組織全体の原則として定着したという点だ。この原則のおかげで被害者らが言うことができ、Metoo運動に進むことができた。被害者中心主義と2次加害禁止の原則は、性暴力事件に対して無罪判決を乱発する裁判所など既存のシステムを超える、真の進歩運動であった」。
 一方、前号の『かけはし』1月18日号の「韓国は、いま」に掲載された、イ・ヨンジュ委員長候補へのインタビュー(民主労総3期執行部選挙)では、民主労総をはじめとする各組合の女性委員会の現状を以下のように報告している。
 「活動家が一番怒っているのは『女性委員会を作ったら、性暴力対策委になった』ということだ。…今までの女性委員会に託された役割は、性平等委員会(紙面では男性平等委員会となっているが誤植)が主管することが適切であると思う。女性委員会は、女性の権利争奪をどのように民主労総の中心事業として配置するのか熟考して政策代案を出すことができなくてはならない。…女性労働者の問題は、特に雇用と賃金での差別問題などに対する課題を本格的に提示しようと計画している。また、民主労総の核心的闘争課題の中の一つとして、フェミニズムが定着し、民主労総が、その課題を主導しようとすることだ」。
 民主労総の中に女性委員会が作られて、被害者中心主義と2次加害禁止の原則が定着したことも、そして、その女性委員会が性暴力対策委員会になってしまっていることも事実だろう。特にその後者は、80年代のわが同盟の「女性差別問題の取り組み」と重なる。「革命組織に男も女もない」とレーニン主義を振りかざした男もいたが、男たちの多くは「告発された加害者の個人問題」「女性解放の闘いは女たちの課題」だとして、「性差別、性暴力の根絶と予防を通じて、人間の尊厳を保障して、性平等な組織文化を作っていくこと」(変革党・第3号党規から)を放棄してしまった。そして疲弊して、変わろうとしない組織に愛想をつかした女性たちは、次々と組織を離れていったのであった。
 当時、私もそんな男たちの一人であったわけだが、どうしようもない無力感というものを抱えていた。あれから35年経った現在のフェミニズムに対するとらえ方と違って、当時のフェミニズムは「女性の思想」であり、フェミニストは「女性」であった。したがって男がどれだけ勉強しても、どれだけ女性たちの闘いに共感してもフェミニストという主体には絶対になれなかったのである。
 1991年6月に勁草書房から出版された江原由美子の『ラディカル・フェミニズム再興』で、著者は反フェミニズムの台頭に対する根本的な解決として「フェミニズムの女性カテゴリーからの離脱」を提起して、「フェミニズムを女性カテゴリーにもっぱら所属させることをやめ、性の平等を求める人びとに所属させるよう決断すべきなのかもしれない」と提案している。
 『かけはし』前号に掲載された変革党の第3号党規(性差別・性暴力根絶および予防に関する規定)では、女性解放や性の解放といった用語はもちろんのこと、フェミニズムという用語も一切使用されていない。性平等な文化、性平等教育などすべてが「性平等」として表現している。これは性差別・性暴力の根絶と予防は、LGBTなども含めたすべての性に属する者の共同の実践なのだということを意識させようとしているからだろう。
 性差別に限らず、多くの差別が社会中にまん延している。フェミニズム社会主義の内実をどれだけ豊かなものにしていけるのか問われているような気がしている。  (星)


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